セコムの事業と運営の憲法
「セコムの事業と運営の憲法」は1992年7月、セコムの創業30周年を機に、取締役最高顧問・創業者の飯田 亮が
セコムグループ社員向けに自ら執筆したものです。
セコムの基本理念となるものですので、以下にご紹介します。
セコムグループが実施すべき事業の憲法
本年(1992年)、我々は、創業から30周年を迎えた。
この30年間セコムグループは、文字どおりゼロから出発し、
多くの経験を積み重ね、人材を育成、蓄積し、規模を拡大し、社会からの信頼を得つつ、将来への発展の基盤を整えてきた。
その基盤の上に、これから将来に向かって我々の考える壮大な社会システム産業を構築しようとするのであるが、
この際最も重要なことは、将来にわたってセコムグループが実施すべき事業方針を定めることである。
企業というものは、さまざまな角度からの評価が可能であり、したがって言い方もいろいろである。
たとえば、儲かっている会社ですね。
含み資産が大きい会社ですね。
有名な会社ですね。
大きな会社ですね。
優秀な人材がいる会社ですね。
いい仕事をしている会社ですね、などさまざまである。
良い会社はもちろんさまざまな良い要素を持ち合わせているものであるが、
我々セコムグループが20年後、30年後、50年後に、どのような言葉で代表されて評価されるべきであるかを考えるべきである。
私は、何よりも「いい仕事をしている会社ですね」の言葉を受けたいし、次世代、
そしてその次の世代の仲間にも、「セコムです」と言ったときに同様の評価を得させたいと思うのである。
そのためには、セコムの基本理念である「社会に有益な事業を行う」を常に考えの根底にすえ、事業の選択を行うべきであり、
いささかも逸脱をしてはならないのである。
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セコムの提供する社会サービスシステムは、人々の安心のための、そしてよりよき社会のためのサービスシステムである。
この基本から外れる事業は、行ってはならない。
そして実施する事業が、かかる目的に合致するものであっても、 派生的に社会に有害なものの発生が予測されるものは、行ってはならない。
ただし、セコムが行う 社会サービスシステムを最良のものとするための周辺事業、および人材育成、ノウハウ取得のための事業は、 積極的に行うべきである。 - セコムの行う社会サービスシステムは、高度な技術に立脚した革新的最良のものでなければならない。
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他のいかなる組織が実施するよりも、セコムが事業化し実施することが、最適であるとの判断が重要である。
他の組織が最適な場合には、他の組織で実施する方が社会にとって有益であるからである。 -
新しい社会には、常に新たな社会サービスシステムが必要とされる。
セコムは、常に社会の変化を継続的に注視し、 受動的な態度ではなく、能動的に社会の変化に先駆けて、社会サービスシステムを準備し、実行する責任を有する。
新しい社会サービスシステムであるから、当然のこととして、最初の段階では、社会習慣になじまず、 相当な障害が予想される。
しかし、それだからこそセコムが選択する価値のある事業なのである。
あきらめることなく、果敢に挑戦し実現させるべきである。
それがセコムの勇気である。 -
選択した事業の実行にあたっては、自ら完全に納得できるものとして事業を行うべきであり、
妥協は徹底して排除しなければならない。
自らの努力、苦労を減じるため、納得できないまま妥協的に安直に他の組織と提携するようなことはしてはならない。
セコムグループ、社会システム産業としての運営憲法
前に述べた事業遂行の心構えを土台として、セコムが社会システム産業として将来発展をするために、そして組織の風土が、
常に革新的であり、濁りのない清冽なものであり続けるために、今までの経験から得た我々のあるべき考え方、
あり方を確固たるセコムの基本方針として定め、認識する必要があると考える。
運営基本10ヵ条
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セコムは社業を通じ、社会に貢献する。
それゆえにセコムは、社会にとって有用不可欠な企業体でなければならない。
セコムは、社会の利益に反したり、社会の利益にならない事業を決して行わないことはもちろん、 すべての企業行動について、反社会的な行動をしてはならない。 -
セコムは、社会に貢献する事業を発掘、実現しつづける責任と使命を有する。
その発掘のため、常に社会の事象、社会の方向を凝視し、敏感でなければならない。
実現にあたっては、あくなき可能性を追求し、いかなる困難も乗り越える旺盛な革新と実現へのエネルギーを有すること。 - 額に汗し、努力の結果以外の利益は、受けない。
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社会は一人ひとりの人間によって構成される。
セコムも同様に一人ひとりの社員によって構成される組織体である。
いうまでもなく、一番重要なことは、社員一人ひとりが、活き活きと価値ある人生を送ることである。
セコムの組織内にあってはもちろんであるが、組織外であっても、人間尊重が基本であり、いかなる場合においても、 いささかも人間の尊厳を傷つけてはならない。 -
セコムは他企業、他組織を誹謗してはならない。
それが競合する組織体であっても同様である。
競争は正々堂々とセコムらしく行うべきである。 - すべてのことに関して、セコムの判断の尺度は、「正しいかどうか」と「公正であるかどうか」である。
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セコムは、常に革新的でありつづける。
そのため、否定の精神、現状打破の精神を持ちつづけ絶やさない。 - セコムは、すべてに関して礼節を重んずる。
- セコムは、その時々の風潮に溺れず、流されず、常に原理原則に立脚し、凛然と事を決する。
- セコムの社員は、いかなることに関しても、自らの立場、職責を利用した言動をしてはならない。